皆さんこんにちは。
2月4日に2020年度の太陽光発電の固定買取価格の議長案が公表されました。
その中で産業用太陽光発電のFIT制度は大幅に内容が改正され、2020年度以降は、固定価格買取が余剰売電のみ適用となる旨の記載がありました。
今回はFIT制度が終わることにより、「住宅用はお得そうだけど産業用は儲からないんでしょ?」とお考えの方にぴったりな高い利回りを誇るソーラーシェアリングについて解説していきます。
ソーラーシェアリングは儲かる?成功の秘訣は遮光率!
ソーラーシェアリングとは?
ソーラーシェアリングとは、田んぼや畑などの農地で農作物を育てながらその上に太陽光パネルを設置する、農業と太陽光発電事業を両立させる事業モデルのことです。
このモデルは、農林水産省が2013年3月に出した「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」という通達により定められました(「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備」が現在のソーラーシェアリングです。)。
ソーラーシェアリングのメリット
農業と太陽光発電がが両立できる仕組み
ソーラーシェアリングは農業収入と太陽光発電収入を同時に手にする事ができます。
その仕組みを詳しく解説していきます。
遮光率で日射量を調整
通常の野立て太陽光発電では、少しでも多くの電力を発電するために、太陽光を最大限太陽光パネルに当てて発電を行います。
しかし、ソーラーシェアリングは太陽光パネルの下で農作物を育てなければいけませんので、ある程度は太陽光を農作物=地面に当てなければなりません。これを「遮光率」と呼び、遮光率が高くなればなるほど農作物に当たる太陽光は少なくなり、発電量が増えます。
では、遮光率が高ければたくさん発電ができて良いかというとそうではなく、下表の通り、遮光率により育てやすい農作物が異なるため注意が必要です。
表【遮光率別の育成最適農作物】
なぜ光が遮られても農作物が育つのか?光飽和点とは?
1日のうちで、太陽は東から西に動くため、農作物に当たる光の向きは変わります。
ですので、空中に発電パネルが設置されていても、農作物にはほぼ満遍なく太陽の光が当たるのです。
また、太陽活動の活発化により、既存の農作物には太陽光が強すぎる状態になりつつあります。
太陽光が強すぎるというのは、農作物が太陽光を受けて光合成を行う時に、強すぎる太陽光を当ててもある一定の値以上は光合成の速度が速くなりません。これを光飽和点と言います。
ですので、下図のとおり、光飽和点を超えた太陽光を利用して太陽光発電を行えば、農作物を育てると同時に太陽光発電を行う事ができます。/
図【光補償点・光飽和点の説明】
光補償点:植物の呼吸と光合成が釣り合う光の強さのこと。
光飽和点:植物の光合成は、光の強度が上がると速度が速くなるが、ある強度以上では飽和状態に達し、それ以上早くならないその光の強度のこと。
遮光率:植物の光合成に必要な光を確保し、それ以上の光を遮る比率。
ソーラーシェアリングのデメリット
ソーラーシェアリングの地目は?
ソーラーシェアリングは、通常の野立て太陽光発電とは違い、ほとんどの土地は農地のままで、支柱の接地する部分の地面のみを雑種地等に変更(農地転用)します。
なお、支柱の接地部分だけとはいえ、農地転用しなければならないことに変わりはありません。
そして、それが「農用地区域内」であれば通常の農地転用は認められませんので、「一時転用」を行わなければいけません。
一時転用とは、読んで字の如く、農地を一時的に農地以外に利用することです。
農地の一時転用の申請手続きは、通常の「農地転用」の申請手続きと同じですが、一時転用中に行なっていた事業が終われば、農地に復元することが条件となります。
ソーラーシェアリングは20年間続ける事ができないリスクがある
上記で解説した農地の一時転用は、通常3年間となりますので、産業用太陽光発電を20年間行うのであれば、 3年ごとに申請が必要となります。
そして、その申請の際には、初回の申請と違う2つの条件があります。それが下記の2つです。
①農作物の収穫量が周辺のソーラーシェアリングを行なっていない農地の80%を確保する。
②農作物に著しい品質の劣化がないこと。
上記2つを満たすのは、農家にとっても困難である可能性があります。
なぜなら、通常の条件での農作物の育成には慣れている農家でも、空中にソーラーパネルがある状態での育成をした事がないため、どのように育成するかは試行錯誤することになるためです。
つまりソーラーシェアリングは、農家ですら苦戦する事が想定されますので、全く農業の知識がない投資家が、一人で行うのは相当のリスクがあるといえます。
一時転用は10年に延長することができる
2019年に農林水産省が出した 「営農型発電設備の設置に係る農地転用等の取扱いについて」の通達により、農地の一時転用を行う際に一定の条件を満たせば、転用許可を10年間に延長する事ができます。
その条件は以下の通りです。
①以下の農業担い手1〜4が、自らの農地または賃借権等を持つ農地を利用する場合
1.効率的かつ安定的な農業経営体
2.農業経営基盤強化促進法による認定事業者
3.同法による認定新規就農者
4.将来法人化して認定農業者になる事が見込まれる集落営農体
②荒廃農地
③第二種農地、第三種農地
つまり、将来有望な農家か、荒廃農地または恒久的な農地転用がある程度認められる農地であれば、10年間に延長する事ができるという事です。
ですので、農家でなければ10年間の農地の一時転用ができないというわけではありません。
農家でなければ農作物を安定して作る事ができない
これも上記と同様の理由ですが、ソーラーシェアリングは農作物の育成のために、ある程度隙間を開けて太陽光パネルを設置します。
ですので、農作物の栽培を安定して行う事ができなければ、利回りは圧倒的に低くなり、最終的に投資額を回収できないリスクがあります。
リスクの回避方法
農業についての知識は、事業地の近隣農家に聞く事が一番ですが、全く面識のない方からノウハウを聞くことは難しいと思います。
そのような時は、事業地を管轄とするJA職員に教えてもらうのが最も確実でしょう。
まとめ
今回はソーラーシェアリングの詳細やメリット・デメリットを解説しました。
農業の知識が全くない投資家からすると手が出しにくいと思いますが、農家の知り合いがいる場合やJA職員等に指導をもらいながら投資を行う事は可能と思われます。
導入する際はリスクとメリットを天秤にかけて、よく検討しましょう。
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