皆さんこんにちは。
近年、上場企業が行うことが増えている「MSワラント」という資金調達方法があります。
このMSワラントは「悪魔の増資」とも呼ばれますが、なぜそのような物騒な名称をつけられているのか、詳しく解説していきます。
投資信託については下記の記事を参照ください。
MSワラントで株価が急落?公募増資との違いとは?
MSワラントとは?
上場企業が資金調達をする方法は、一般的に2種類あります。
1つは、新たに株を発行して投資家から資金を集める「公募増資」、もう1つは「銀行からの借り入れ」です。
しかし、赤字が続く企業は信用力が落ちているので、これらの方法では資金調達ができません。
そこで、活用されるのがMSワラントです。
MSワラントの正式名称は「行使価額修正条項付新株予約権(Moving Strike Warrant)」といいます。
MSワラントの説明の前に、普通のワラント(新株予約権)とはなんなのか解説します。
ワラントとは、発行した企業の株式を一定期間内に一定の価格(行使価額)で購入できる権利です。
例えば、一株あたり株価が100円の企業がワラントを10円で発行し、その行使価額が50円だったとすると、ワラントの所有者は、その権利を行使することで、100円の株を五十円で手に入れることができます。
行使を躊躇っているうちに株価が30円まで下がってしまった場合は、権利を行使するよりも普通に購入した方がお得ですので、行使期間内に株価が上がらなければワラントの効力は切れて、取得したワラント料10円だけが無駄となります。
一方、MSワラントは、「前日の株価終値よりも安い価格で購入できるように、行使価額を修正する条項のついた新株予約権」です。
仮に、前日終値の90%の価格で新株を購入する条項だとすれば、前日終値100円の日は90円で新株を購入でき、前日終値が90円に下がってしまったときは81円で新株を購入できるのです。
つまり、既存の株主から見ると、大量の新株が通常の株価よりも安く発行されるため、株価の下落が進みやすいことから、早めの損切りを行う必要があると考える投資家が増えることでさらに株価が下がり、短期的な株価の急落を招きかねないのです。
また、MSワラントの引受先はあらかじめ決まっており、証券会社であることが多いです。
一般投資家は引き受けることができませんので、証券会社にとって有利な条件を付けたものとなっています。
MSワラントと公募増資の違いとは
上場企業が公募増資を行う場合、新株式を一度に多数発行することで、あらかじめ決まった額を調達します。
すると、新株式が発行されるため、発行前に株式を保有していた投資家にとっては、総株式数に占める議決権比率が発行時点で低下します。
この議決比率の低下のことを「株式の希薄化」といいます。
企業からみると事業拡大等に必要な資金を確実に調達できるため安定した資金調達を実現できます。
一方、MSワラントを発行する場合は、発行するのは権利だけのため、新株式が発行されるのは投資家が権利を行使したときになります。
そのため、公募増資と比べて一度に調達する資金が変動することから、非常に不安定な資金調達となります。
つまり、公募増資に比べるとMSワラントは劣ることが多く、より資金繰りが厳しい企業が発行することが多いといえます。
実際に、金融機関から資金調達ができない財務状態の悪いバイオ企業や新興企業が発行することがほとんどです。
MSワラントは株式の希薄化が起こりやすい
上記のとおり、MSワラントによる資金調達の場合は新株式の発行が段階的となることや、行使されずに権利が無効となる可能性もあるため、急激な株式の希薄化が起こる公募増資よりも、緩やかな希薄化が続きます。
しかし、MSワラントの場合、行使価額が引き下げられる度に大量の行使がなされ、新株式が相場よりもかなり安く、大量に発行される可能性があります。
大量に行使されれば、当然急激な希薄化が起こりますので、MSワラントの発行は警戒する必要があるのです。
つまり、MSワラントは、急激な希薄化は避けられるものの、長期的な株価押し下げ要因となりますので、業績が堅調で財務が健全な企業は避ける傾向が強く、業績が悪い財務の健全性が低い企業が、公募増資や銀行による融資を受けることができずに、MSワラントに頼ることが多いのです。
MSワラントは株価の急落を招く可能性が高い
上記の通り、MSワラントは引受先となる証券会社が必ず儲かり、既存株主が損をする仕組みとなっています。
それは、 MSワラントの引受先が前日終値より安い株価(90%など)で新株を手に入れる権利を持っているため、新株を手に入れた直後に株式市場で売却すれば膨大な利益を手に入れることができるからです。
つまり、証券会社は、新株をホールドせず、発行後に即売却することで利益を出すことができますので、MSワラントを発行した企業の株価は下がり続けることとなります。
ですので、企業がMSワラントの発行を発表すると、株価は急落します。
つまり、MSワラントを発表した企業の株を保有している場合に最も損を少なくする方法は、発表の翌日の朝に成り売りする以外にはありません。
また、MSワラントの発行が原因で株価の下がっている企業の株は購入しないようにしましょう。
まとめ
MSワラントは、発行企業の既存株主が必ず損をする「悪魔の錬金術」です。
そして、MSワラントが行われた場合は必ずと言っていいほど株価が大幅に下落します。
つまり、過去に一度でもMSワラントを発行したことがある企業は、既存株主をないがしろにしていると言っても過言ではなく、今後もMSワラントを行う可能性が想定されますので、業績がよほど良い企業以外は株式を買わないようにするのが賢明でしょう。
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