中国を震源地とした新型肺炎が世界に広まりつつありますが、それと同時に金融市場でもリスクオフムードが漂っています。今回は新型肺炎と今後の日本経済への影響について分析をしていきたいと思います(この記事は1月31日に記載しています。)。
中国発のコロナウイルスショックが起こる可能性がある?
金融危機の前触れとなるのか?
中国の大都市・武漢を震源として、瞬く間に世界中に広まったコロナウイルス。中国政府は武漢を事実上封鎖し、日本政府は1月28日に新型肺炎を 「指定感染症」に指定することを閣議決定しました。また、 1月31日にはWHOが「緊急事態宣言」を宣言し、国際的な対策が取られ始めています。
次第に危機感が増していく状況を反映して、世界の主要な株価は急落し、日経平均株価は1月30日に心理的節目となる23,000円を割りました。これは、年初のイランとアメリカの対立による地政学リスクの高まりにより、急落した1月6日をさらに下回る状況です。
また、今後もコロナウイルス関連のニュースひとつで株価が乱高下し今後の見通しを立てづらい状況が続くと思われます。
SARSが発生した2003年の相場は?
過去、現在感染が広まる新型コロナウイルスと同様に中国を発信源とした「SARS」が世界中で猛威を振るいました。
当時の金融市場を振り返ると、2002年11月16日に初の感染者が発見され、最終的に32か国に感染が拡大。その後、世界中で「封じ込め対策」が開始され、2003年4月16日に原因となるSARSウイルスが特定、7月に終息宣言が出されました。
当時の株価は、SARSが広まった2002年後半に下げ基調に入った後、原因となるウイルスの特定に伴い反発しています。
ただし、2003年は3月にイラク戦争開戦のリスクオフイベントもあったので、SARSの発生〜終息までの株価推移と今回の新型コロナウイルスの発生以降の株価推移は必ずしもリンクしないと思われます。
今後の中国の動向が与える日本経済への影響は?
SARS発生時に比べ、世界経済に与える中国の影響力は遥かに大きくなっていますので、中国の動向次第では日本経済も大きな影響を受けることが想定されます。とりわけ影響を受けるのは、観光業です。
国内外で旅行等の自粛勧告や禁止等の対策が取られれば、観光関連株が大幅に売られるのは当然ですが、日本経済にはさらに大きな影響を与えることが懸念されます。
アベノミクスによりインバウンド観光客の増加を推し進めたことにより、インバウンド消費は2018年に4兆円を突破し、名目GDPの0.8%を占めるほどになりました。なお、GDPの成長率に関しても、観光庁作成の 「近年のインバウンド増加がもたらす経済・地方へのインパクト」によれば、観光業の2012年から2016年の名目GDP成長への寄与率は4.5%と無視できない数値となっています。
また、ウイルスの発生により、中国政府は団体客の海外渡航を禁止しましたが、それが海 日本への渡航の最大需要期となる春節と重なったこともあり、今年の観光業界への影響は、SARSが発生した2003年当時より影響が大きくなることが想定されます。
ウイルスの広がりにより逆行高となる分野も!
逆にウイルスの危険性が指摘されるにつれ、日経平均株価に逆行して株価が上昇しているのが、感染予防として注目されているマスク関連株や医薬品関連株です。
特に連日、ニュース等でマスク不足が報道され始めると、マスクの製造販売を手がける川本産業や医薬品販売の中京医薬品は連日ストップ高となりました。
また、1月22日には「医療機関から出る廃棄物を適切に処理することで、感染防止に注力してほしい」と環境省が自治体などに通知を行っています。
医療機関から出る廃棄物とは、感染患者の治療に使われた紙くず類やプラスチック、患者の血液や体液を含むもの、注射器や注射針等です。不適切な処理を行うと、コロナウイルスの感染拡大に繋がるため、需要の増加が見込まれることから、投資家の注目を集める可能性は大いにあります。
まとめ
今後も新型コロナウイルスの感染拡大は続くと想定されます。原因が特定され、治療法が確立されるまでは、不安定な相場が続くことが想定されます。
また、関連株への投資を検討されている方も中国、日本等の各国政府の動向次第で激しく値が動く可能性がありますので注意しましょう。
※この記事は私の個人的見解です。
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