皆さんこんにちは。
2020年7月29日にANAが、8月3日にJAL(日本航空)は、2021年3月期第1四半期の決算短信を発表しました。
その内容は937億円の純損失というショッキングな内容でした。
今回は、JALの2021年3月期第1四半期の分析及び今後の倒産確率について考察していきたいと思います。
上場企業が倒産した際に保有株式がどうなるかを下記記事でまとめておりますので、ご参照ください!
JALは大赤字で倒産の危機に直面?建て直す可能性はあるのか?
JALの2021年3月期第1四半期損益計算書
同社は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2020年3月期の第4四半期において、229億円の赤字を計上し、2009年の再上場後としては初の四半期赤字となっていました。
それに続き、2021年3月期第1四半期も937億円(前年同月比▲1,066億円)の巨額損失を計上しています。
【JALの2021年3月期第1四半期決算短信(損益計算書のみ抜粋)】
その原因は、同社の収益源となっていた国際線の売上が前期比▲97.9%の27億円、国内線の売上も前期比▲85.1%の189億円となったこと、つまり、政府や自治体の自粛要請により旅行需要がほぼ無くなったことによるものです。
JAL側も不要な便を減少させたり、人件費等の経費を削減させたりして、損失の圧縮に努めていますが、焼け石に水の状態です。
2021年3月期第1四半期の貸借対照表
下図の貸借対照表を見てみると、2021年6月末時点の同社の手元現金は、3,943億円(前何同月比+652億円)と増加しています。
損益計算書における損失は現金の減少要因となりますので、本来で有れば赤字となった年は現金が減少しますが、JALは新型コロナウイルスが感染拡大してきたタイミングで金融機関等から融資を受けることにより、手元現金を厚くすることに成功しました。
結果、有利子負債が4,539億円(前年同月比+2,151億円)と倍増しています。
極論ではありますが、現金があれば、企業は倒産することはありませんので、現時点ではJALがすぐに倒産する可能性は低いといえます。
逆に、 JALが金融機関から融資を受けることが出来なくなれば、手元現金がなくなり、倒産する可能性があるということです。
【JALの2021年3月期第1四半期決算短信(貸借対照表のみ抜粋)】
なお、JALと双璧をなす国内航空大手のANAホールディングス(HD)が7月29日に発表した2021年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比75.7%減の1216億円、最終損失は1088億円の赤字(前期比▲1,202億円)となりましたので、状況はJALと同様と見ても良いでしょう。
2021年3月期通期のJALの決算はどうなるのか?
新型コロナウイルスの収束時期が見通せないことから、2021年3月期の連結業績予想は「公表できる状況にないため引き続き未定」としました。
その一方、決算発表では同社が描く「需要回復シナリオ」を提示しています。
そのシナリオは、2021年3月期の国際旅客収入を前期比10~20%程度、国内旅客収入は前期比55~65%程度とし、それを合算すると前期比35~45%程度にとどまります。
さらに貨物郵便やマイレージ事業、JALパックなど旅行事業等のその他の事業の収益や前述した経費の削減などを加味すると、連結売上収益の減収額の5割程度の利益悪化になる、と見通しを示しました。
つまり、減収幅の半分が損失となるということですので、当然通期でも黒字になることはないとJAL側も想定しているということです。
【JALが提示した「需要回復シナリオ」】
JALが倒産する可能性は?
非常事態宣言が解除された後、観光業界は政府が主導したGoToキャンペーンにより、夏休みに向けて国内旅行の需要回復に期待がかかっていました。
しかし、東京を中心に大都市圏で新型コロナは感染を拡大しており、国内線需要の回復にもブレーキがかかってしまいました。
特に、東京都がキャンペーンから除外された影響は大きく、東京から沖縄や北海道等への旅行の予約が入り始めていた矢先だったこともあり、国内旅行の活発化には全く繋がっていないと言えます。
このような状況では、航空業界各社の業績が回復するはずはありませんので、新型コロナウイルスに有効なワクチンが開発され、一般に流通するまでは、以前のような利益を出すことは非常に難しいでしょう。
なお、ワクチンの開発は早ければ9月と言われていますが、開発から実用化までにはさらに数ヶ月かかることが想定されますので、自由に旅行が可能となるにはまだまだ時間がかかりそうです。
上記で解説した通り、企業は金融機関から新規で融資を受けている間は、倒産することはありません。
しかし、それは裏を返せば、 JALやANAは金融機関から融資を受けることが可能な間にワクチンが完成しなければ倒産する可能性が非常に高くなるということです。
ワクチンの実用化の時期が全く定まらない中、頼れるのは金融機関のみですが、民間の金融機関には融資可能額の限度があります。
大手航空会社の資金繰りが民間の金融機関の手に負えなくなったときには、過去にJALが破綻したときの二の舞になる可能性がありますので、破綻を防ぐには、破綻する前に公的資金の注入が必要となるでしょう。
まとめ
コロナ禍前は盤石に見えていた大手航空会社も、新型コロナウイルスの感染拡大により、破綻する可能性はゼロではありません。
特にその資金繰りは注視していく必要があるでしょう。
政府へ過去のJAL破綻の二の舞にならぬよう、対策を考える必要があるのではないでしょうか。
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