皆さんこんにちは。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気への影響に対し、2020年4月23日、日本銀行(以下、日銀)は追加の金融緩和策を検討する方向であると報じられました。
今回は、今後、日銀が行うことができるであろう追加の金融緩和策について考察していきます。
日銀の追加金融緩和策はもう手詰まり?新型コロナウイルスへの対策はあるのか?
日銀が行う金融緩和策とは?
現在、日銀が行なっている金融政策は「量的緩和政策」、「質的緩和政策」の2つに大別されます。
「量的緩和政策」とは、市中への資金供給を増加させる政策です。
具体的な方法の一つとして、日銀が金融機関の保有する国債を買い取り、金融機関が預金等で集めた資金を手元に余らせることで貸付を行うよう仕向け、市場に出回る総資金量を増加させる方法があります。
日銀はこの政策を達成を目指し、最大年間80兆円の長期国債を買い入れる方針を示していますが、実際の買入額は年間20兆円程度にとどまっています。
つまり、長期国債を買いたくても買えない状況ということですから、「量的緩和政策」はすでに限界を迎えていると言っても良いでしょう。
一方「質的緩和政策」はETF(上場投資信託)等の株式やREIT(不動産投資信託)を買い入れることにより、景気に刺激を与える政策です。
日銀は2010年に質的緩和政策を開始しましたが、買入額を年々増加させていき、2016年7月以降はETFを年間6兆円、REITを900億円という非常に早いペースで買入を継続してきました。
結果、有価証券報告書の上位株主に日銀が記載されるような、異常な事態が起きています。
また、新型コロナウイルスによる日経平均株価の急落を受け、混乱した株式市場を安定させるために、2020年3月16日には、ETFの購入を年間12兆円、REITの購入は1,800億円へと倍増させました。
この金額は、過去に類を見ない規模であり、これ以上買入額を増加させることは困難だと思われることから、質的緩和も近く限界を迎えそうです。
また、日銀は金利についても政策的に行っています。
「マイナス金利」という言葉は聞き覚えがあるのでしょうか?
この政策については、下記の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
日銀の新型コロナウイルスによる景気後退への対策はあまり効果がない
現在、日本経済は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、景気後退(リセッション)局面に入っています。
その兆候は、消費税増税が導入された2019年10月から出ており、実質GDP(国内総生産)成長率は、2019年10~12月期にマイナス7.2%と大幅なマイナス成長となっていました。
しかし、その後の新型コロナウイルス感染拡大により経済活動はさらに鈍化していますので、マイナス幅は大きくなると想定されます。
上記のような現状を鑑み、政府や日銀はさまざまな景気刺激対策をすでに行なっています。
景気刺激対策は、主に「政府の財政政策」と「日銀の金融政策」がありますが、政府の財政政策としては、企業や家計の減税・免税措置、個人への給付金支給などを通して実体経済が安定するよう努めています(結果、市場は安定します。)。
一方、日銀の金融政策は、短期金利の操作により資金の流通量等を調節することで市場を通して経済活動を支えています。
上記で述べた通り、現在の日本経済はコロナウイルスの影響でリセッション局面に入っていますので、政府の財政政策と日銀の金融政策双方が必要になるのは当然です。
しかし、景気刺激策として報道されているのは政府の財政政策(一律10万円給付等)ばかりであり、日銀の金融政策は株価の急落の際に話題になったくらいでほとんど報道されていません。
リーマンショックが起きた時と違い、新型コロナウイルスにより先に実体経済が悪化したため、日銀にできる対応がほとんどないからです。
つまり、リーマンショックは市場で起きた打撃が実体経済に影響を出したため、日銀も市場を安定させる政策を通して、実体経済に介入できたのに対し、今回は実体経済がすでに悪化しているため、対応策が限られているということを意味します。
リーマンショックとコロナショックの違いは下記の記事で詳しく解説していますので、ご一読ください。
日銀に残された対策は政府への圧力のみ
上記で日銀には新型コロナ対策としては、有効な手法がほとんど残されていないと述べましたが、全く打つ手がないかというとそうではありません。
結論から言うと、「日銀にはもう打つ手がないので、政府がなんとかしてくれ」と圧力をかけることです。
ちなみに、平常時に日銀がこのような発言を行うと、「経済大国日本の中央銀行が金融政策的な限界を認めた」として、円高・株安、ひいては金融危機に発展してしまう危険性すらあります。
しかし、このような非常事態では、日銀を含め、世界各国の中央銀行は可能な限りの金融緩和策を取りますので、金融市場の影響は限定的だと想定されます。
また、日銀の対応策がないことを公表することで、政府が思い切った経済対策を打ち出す可能性もありますので、だらだらと金融緩和を続けるのに比べたら、大きな意味がある行動と言えます。
まとめ
日銀には新型コロナウイルスが引き起こしたリセッションへの対応策はほとんどありません。
ですが、現在の日本経済がいかに危うい状態であるか分析して、政府の思い切った経済対策を促すことはできます。
日銀としても存在感を出すために、従前では行えないような柔軟な対応をして欲しいものです。
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