個人事業主が融資を受ける方法は?事業資金の審査方法は?

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個人事業主や操業されたばかりの中小企業経営者の方にとって、銀行から融資を受けるのは難しい、という印象があるかと思います。私は金融機関業務の中で法人融資の経験が最も長く、つい最近まで法人融資を専門に行っていましたので、今回は事業資金の審査のコツについて最新の状況を解説していきます。

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コツさえ抑えれば事業融資の審査は突破できる!

事業融資の基本!保証・金利の決まり方は?

金融機関の収益となる利息≒金利は、銀行が顧客から集めた大切な「預金」を「貸付」するリスクに対する対価ですので、貸付リスクが低ければ金利も低くなり、リスクが高ければ金利も高くなります。

また、事業資金は個人向けローンと違い、基本的には保証会社の保証がつきません。中小企業や個人事業主の方向けには全国にある「保証協会」という保証機関が事業資金向けの保証を行っていますが、保証料が高いため最近は無保証(プロパー)融資が増加しています。それでも、金融機関から保証協会の保証付きでなければ融資できないと言われるのであれば、リスクが高いと判断されているということですので、上記のとおり、金利も高くなります。

 

銀行は決算書・確定申告書のここを見る!

銀行の審査はどのように行われる?

銀行の審査のフローは、法人も個人事業主も同じで、

①借入(予定)者から申込を受ける

②融資担当者による稟議の起案

③支店での審査

④本店審査部での審査

⑤役員の審査

⑥担当者へ審査結果回答

といった具合です。なお、③から⑤は融資の金額や保証の有無、金利の引き下げ幅等により決裁権限が異なりますので、③→⑥と支店で完結することもあります。

また、中小企業・個人事業主向け融資であれば、③の支店長決裁がほとんどだと思います。基本的に営業支店は融資の実績を伸ばしたいので、支店長決裁であれば審査は割と簡単に通ります。

決裁権限の基準は金融機関によって異なりますが、目安としては、金額5千万円以下で「一定の基準」を満たしてば、支店長決裁となる可能性は高く、スムーズに融資を受けることができるでしょう。

しかし、本店審査部で決裁が必要になる場合は、金額が大きかったり、何か問題のある会社と判定されていますので、審査は厳しく、時間もかかります。

 

融資の決め手になる「格付」とは?

では、一定の基準とは何かというと、金融機関が取引を行う会社につける「格付」と呼ばれるランクが鍵になります。格付は、会社の財務内容(BS=貸借対照表)が良ければ高く、悪ければ低くなります。これは審査に強く影響するもので、低格付企業の決裁権限は貸付金額が少なくても本店審査部になることが多々あります。

また、最近の格付審査は貸借対照表の様々な数値を組み合わせることにより、各金融機関の審査システムが自動で判断しています。その判断方法はブラックボックスでどのように導き出しているのかは謎ですが、押さえておけば格付をあげることができる重要なポイントがいくつかありますので、下記表1を参考に解説します(算式についている①や②は表とリンクします)。

自己資本比率

貸借対照表上の「①自己資本÷②総資産(資本)」で求められる比率です。この数値が高いほど、創業から現在までの経営が安定していたことが分かりますので、安全性が高い企業だと判定されます。自己資本比率の目安としては、 30%程度で優良企業と判断されます。

流動比率

こちらも貸借対照表上の「③流動資産÷④流動負債」で求められます。こちらは、短期的に支払わなければいけない支払手形や買掛金を短期的な資産である受取手形や売掛金で賄えているか、つまり資金繰りが上手くいっているか判定します。100%を上回っていれば、短期的な資金繰りに問題ない企業と言えるでしょう。

固定長期適合率

貸借対照表上の「⑤固定資産÷⑥(固定負債+自己資本)」で算出されます。これは、会社の社屋等の固定資産を長期借入金や返済の必要がない自己資本で賄うことができるか、つまり健全な投資が行われ、長期的な支払能力があるか確認する経営指標です。目安としては、100%を下回ることが望ましいとされます。

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上記の経営指標を決算期ごとに確認を行うことにより、健全な経営ができているかどうかが分かりますので、融資を受ける必要がなくても常に気を配るべきだと思います。

 

融資の可否の判断基準は?最も重要なのは経常利益!

上記で格付が審査に大きな影響を与えることを説明しましたが、いくら格付がよくても直近の業績が赤字ではまったく意味がありません。なぜなら、金融機関は返済原資を「経常利益」+「減価償却費」で見積もっているため、利益がなければ返済がままならない企業と判断するためです。そのために、直近3期分の決算書(確定申告書)の業績(PL=損益計算書)を確認し、収益性に問題がないか審査します。

損益計算書の中でも銀行が最も注目するのは、「営業利益」と「経常利益」です(下記表2参照)。経営者の方の中には「売上高は伸びているから融資をお願いします」と相談をされる方もいますが、金融機関は売上高より利益を重視して審査します。

その中でも営業利益と経常利益がなぜ重視されるかというと、

営業利益

本業で儲かっていれば、長期的に黒字を確保できる可能性が高いため。また、3期分の決算書を確認することによって、実際に長期的に収益が確保できているかどうかも確認する。

経常利益

営業利益から様々な経費を差し引いても利益が出ているかがわかるため。貸付に対して、利益で返済原資がどの程度賄えるか確認するため。

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以上、ざっくりと説明しましたが、上記の定量的な審査方法が通常の金融機関ではとられています。

 

審査が通るかは営業担当者次第?

会社の安全性と収益性が高ければ、審査は簡単に通ります。では、安全性や収益性が低いと審査が通らないかというとそうではありませんし、利益を多く出せば税金が高くなりますので、節税対策として利益を圧縮していても審査を通す事はできます。

しかし、上記の通り金融機関の審査は定量的なものばかりですので、何も対策を取らなければ審査は通りません。では、どう対策すればいいのかというと、営業担当者に上手く決算書の内容を説明することが最も効果的です。

これは私の実体験なのですが、節税をしていたり、業績があまりよくない決算の経営者の方に限って営業担当者に決算書の内容を説明してくれません。きっと節税していることに後ろめたい気持ちがあったり、業績不調の原因を説明することにより融資を受けられないと考えての行動なのだと思いますが、それは逆効果です。

審査の始まりである稟議の起案は営業担当者が行いますので、そこで「利益は少ないけど理由はわかりません」と書くのと、「利益が少ないのは節税のために利益を圧縮したからで、本当なもっと収益が上がっている」「今年度は仕入価格が上がったので赤字だが、来年は仕入価格が元に戻り黒字となる見込み」等と説明するのでは審査の通りやすさは後者の方が上です。

ですので、経営者の方は営業担当者へ積極的に決算内容を開示し、稟議を通してもらえるようにしましょう。

 

まとめ

事業融資の審査を通すコツは、会社の「安全性」と「収益性」が高くなるよう意識することと、営業担当者にいかに自分の会社がいい会社なのか説明することです。

金融機関側も安全なことがわかれば、中小企業や個人事業主に対して融資をしたいと思っていますので、いかに自社を売り込めるかが鍵になること意識し、金融機関との交渉に臨みましょう。

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